友達のトモダチ。

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教科書を鞄に詰め込み急いで教室を出る。周りを見ないように廊下を早足で歩く。休み時間と違って、帰りに虐めている連中に捕まればいつまでもいたぶられる。学校から出るまでは心臓の音が早鐘のように鼓膜を揺らす。 「圭佑くぅ~ん。」 猫なで声だが、確実に強制力のある声に名を呼ばれ心臓が跳ね上がった。足を止め、ゆっくりと振り返る。圭佑の表情が恐怖で歪んでいる。振り返った先に居たのは田村達だった。田村が虐めの主犯、いつも岡村と竹尾を従えている。三人が圭佑を見てニタニタと笑っている。 いや、三人だけではなかった。田村が捕まえるように肩に腕を回している人物、彰人だ。運悪く帰りに捕まってしまった彰人はもう既に顔は蒼白になっていた。 「圭佑くんは運が良かったな~。バイバーイ。」 田村が彰人を捕まえる腕とは逆の手で圭佑に手を振った。ほっとした反面、今から酷い目に合うのが分かっている彰人と目が合えば、思わず目を逸らしてしまう。頭の中で、これはルールだと正当化させて彰人の視線を振り切って逃げるように背を向けて走る。そんな圭佑を後ろからゲラゲラと笑う三人の笑い声が聞こえた。その声は圭佑を追うように、学校から出ても聞こえてくるようだった。 .
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