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喫茶店マダム・ストロベリーへ向かう道の途中で、公園にさしかかる。 木々に囲まれ、遊歩道や芝生の広場がある街のなかでも大きな公園だ。樹木や整えられた生垣には色づいた赤色や黄色が目立ち始めていた。石畳の遊歩道には落ちた葉が散らばり、となりを歩いている明石の頭にもひらひらと降って来る。 一方で、つい先ごろまでは青々と背を伸ばしていた草が、生命力を使い果たした寂しい色で倒れ込んでいた。色づくものと、枯れていくもの。風が首筋を冷やしていく。 「あらら」 となりを歩く明石がそんな声をあげた。 俺たちの進行方向、公園のなかを通る歩道に、ふたりがしゃがみこんでいる。 ひとりは小柄で、背中をまるめている分よけいに小さく見えた。黒髪の少年は、ロングカーディガンの裾をちゃんと足に折りこんで、地面に手を伸ばしている。 そのとなりで同じ格好をしているのは、紫のニット帽を被った青年だ。迷彩柄のブルゾンを着て、ニット帽から白銀色の髪が覗いている。耳朶にぶらさがるいつくもの大ぶりなピアスが、いい目印だった。 「ハルと蛇じゃねえか。なにやってんだ、あれ」     
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