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「レオンさん!何処に行ってたんですか?」
「野暮用だ。野暮用」
野暮用という単語の意味が分からないリウォルが首を傾げるが、野暮用と答えたのでこれ以上答える気は無いレオンは一人で歩き出した。置いていかないでください!とその後ろを急ぎ足でリウォルが小走りでついてくる。レオンはリウォルより一回りほど大きいので、少々頑張らなければ追いつけない。
その気配を感じながら、昔の事を思い出していた。彼を育てた人の事や、友人達の事を。思えば、誰の形見も持っていない。遠い記憶は薄れていって、声も顔も思い出せなくなっていった。ただ、思い出だけがぼんやりとレオンの中に残っている。
薄れていったところには、新しい物が重なっていって記憶は随分と賑やかになった。こうやって生きていくのは、寂しい事なのかも知れないが、レオンはこういう風にしか生きれないのだから、仕方がない。
ふわりと花の香りが鼻腔を掠めた。ああ、これは覚えている。大切な人がくれた花。名前は確かー。
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