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「おおおおおー!村が!村がー!!」
燃え盛る炎を見つめながら絶叫する老人。その背を叩いて励ますのは彼の息子だろうか。恐らく村であった燃え盛る炎がよく見える高台に集まって、行く末を見つめている。
「ねぇ!うちの娘を知らない?」
そう聞いて回っているややふくよかめの女性に、誰もが首を横に振っていた。それを見る度に絶望を深める女性の顔を見ていられないのか、彼女から目を背ける者も多く、女性は更に絶望した。
「よう!失礼するぜ。燃えてんのはあんたらの村か?」
突然どこかから現れたー村人の幾人かには空から降りてきたように見えたー男に驚いたが、村長が魔物退治の為に異端諮問局に相談していたことを思い出した村人が尋ねる。
「あんた異端諮問局の…?」
そうだ、と答えると堰を切ったように涙を流しながら男が喋り出した。
「なんでもっと早く来てくれなかったんだ!あんたらがもっと早く来てくれてれば、俺たちの村は…!今更…もう遅い!あの魔物を退治してくれてりゃあ!あいつらが村を燃やしたんだ!どうしてくれるんだ!」
掴みかかる勢いの男を他の村人が抑えてくれているが、彼らとて同じ気持ちであろう。すまないことをしたとは思っているドライドだが、起こってしまった事はどうしようも無い。
「取り敢えず魔物を退治して来るが、逃げ遅れた奴はいないか?」
「う、うちの娘が!いないんです!」
ドライドの質問に女性が答える。その必死の形相にちょっと引いてしまうが、それは失礼だと踏み止まった。
「分かった。娘さんも探して来る」
僅かな希望を得たように、女性の瞳に光が写った。上空で聞いていた安請け合いして大丈夫なのか、と思い自分の背に戻ったドライドに尋ねた。
「いや、何も言わないわけにはいかないだろう?」
これで見つからなかったらもっと絶望する事になるとは思わないのか。妙に人が好いところがあるのが、彼の長所であり短所であろう。付き合いの短いレオンでも、それは知っているので特に口には出さず黙って燃えている村へ向かった。
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