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蘆穂綿飄 あしのほわたかぜにただよう
花言葉通り“哀愁“を一面に、湖からの風に身を任せ、夕暮れに染まる片葉の蘆。母さん、ここはあなたの好きな場所。ただ湖の雑草のように見なされるこの蘆原に、あなたが横たわっていたのは二十数年前。今日はあなたが恋人を道連れに死を選んだ日・・・。今、車の助手席で眠る彼は何も知らないから、トランクに隠しておいた花束を出してあなたの代わりに横たえる。
「独りにしないで・・・」
あなたが男の身体の上で熱い喘ぎを洩らしていたのを思い出す。
夫しか知らぬ女であったからあっけなく事故で夫を失うと、四肢の関節の抜けた人形のように、親切を装う男達に身を任せた。娘が隣室にいるのも構わず「独りにしないで」
男にむしゃぶりついて、懇願して、身体を揺すった。
最後の男が、お金の尽きた母に愛想を尽かして出て行きそうな気配を感じ、男を刺して自分も刺した。未亡人になって二年足らずの出来事だった。
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