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だが、それを守らずに旧美術室で絵を描いている美術部員がいた。
彼女の名前は、クロカワアユミ。
部長だった私は、彼女に何度も新美術室で描くように注意をしたのだけれど、その度に
「私は許されているから」と聞き入れてはもらえなかった。
顧問もクロカワさんには甘く、軽く注意するだけ。
クロカワさんはいつも特別扱い。
それはきっと、クロカワさんには誰よりも絵の才能があったからだと思う。
本人の希望でコンテストには出したことはないが、誰もがクロカワさんの絵に魅了される。
だから、多少の自由は許していた。
そんなクロカワさんは少し変わった子で、よく独り言を話していた。
あたかも誰かと話しているような素振りなのだが、クロカワさんの前には誰もいない。
そんな姿にみんなは気味悪がってしまい、クロカワさんの周りには誰も集まらない。
そして、不良グループに意地悪をされることもあったようだ。
それもあって、クロカワさんは旧美術室を使っていたのかもしれない。
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