第一話「鬼の居ぬ間に何とやら」

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「はーい!お二人とも!お久しぶりですね」  左右の掌を顔のすぐ下で振る老人ーどう考えても違和感のある行動であるが、その人物こそ異端諮問官ロゥウェイである。その老人に近づいたリウォルが声をかける。 「お久しぶりです。ロゥウェイ先生」 「はい。お久しぶりです。私の都合で授業を放り出してしまってすいませんでした。ああ、若い子は『メンゴ』って言うんでしたね」  成る程、途中で切り上げたのか。気づかなかった、とリウォルは思った。気づいてすらいなかったのだから、ロゥウェイの謝罪は全くの無意味であるが、そこはいい。問題は最後だ。何を言っているのか、リウォルにはさっぱり分からないのだ。 「ロゥウェイ、その流行は三十年前に過ぎ去った」  冷たく、というよりは哀れな物を見るようにレオンが指摘する。しかし、ロゥウェイは「またまた~」と言ってどうも本当だと思っていないらしい。  呆けていたリウォルが尋ねた。 「先生は古代語を操ってらっしゃるので?」 「こぉうだぁいっごぉ…」     
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