2、宮島の海

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 中学のスケッチ大会。並んで一緒に絵を描くような友達がいなかった私は、一人で丘の方に向かった。だいたいの生徒は鳥居が見える浜辺に陣取ろうとしていて、私だけそれに逆行するように歩いた。私は、あんたたちとは違う。あの頃からずっとそう思っていた気がする。みんなと同じところを切り取って絵にするなんて吐きそうだった。    そういえば、あのときも悟が隣にいたんだ。 「お堂みたいなところで絵を描いた気がする。そこに、悟もいた」 「そうかいね」  悟は覚えてないらしいけど、悟もみんなに逆行して、確かに丘の上に来ていた。今までそんなこと、私だって忘れていた。  浜辺から離れて丘にのぼりしばらく歩いていると、お堂があった。  ただっ広い広間は木の板が敷き詰められていて、靴をぬいで入ってみる。開け放たれた廊下に出ると、海が開けて見えた。  ここで描こう。  スケッチブックを開いたとき、先客に気が付いた。悟だった。  いつもクラスではお調子者だった悟が、そのときはたった一人で一心不乱に描いていた。のぞきにいくと、「あぁ、お前か」とにやっと笑った。 「ここ、えぇよな」  そう言って、悟はまた、真剣な表情でスケッチブックに向き合う。私も少し離れた場所に座って、描きはじめた。お堂にいる生徒は私たちだけで、時々旅行者がのぞいては消えていった。  ここから見る海は、空の青さが反射していて、近くで見るよりもずっとずっときれいだと思った。
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