1、ハワイの海

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 悟は時間通りに車でやってきた。ご自慢の、マツダのなんとかという新車だ。焼き鳥のときもその話ばかりしていて、私は閉口してしまった。車になんて興味ないのに。 「よっ。今日は機嫌いいな」  運転席の窓を開けて、悟はにかりと笑った。ちっとも機嫌なんてよくない。  まぁ、悟がそう言う理由もわからないでもない。私は今、リボンが長く垂れ下がった麦わら帽子に、黄色い花柄のブラウス、青くて細身のジーパンといういで立ちだ。おまけに胸元にはピンクのサングラスをぶら下げている。見るからにご機嫌でハッピーそうな恰好だ。 気分だけでも、ハワイぶってやるんだとやけくそな気持ちだった。 「悪い?」  それだけ言って、勝手に後部座席に乗り込んだ。 「は? こういうときは普通、助手席に乗るんじゃないん」  悟が振り返って、不満げな声を上げる。 「助手席嫌いだし」 「だからって、俺はお前の運転手かよ」 「いいから、さっさと出発」  命じると、悟はやれやれとアクセルを踏み込んだ。     
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