1、ハワイの海

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 悟は会っていない間のこと、自分の仕事のことをべらべらと話した。悟は住宅販売の仕事をしている。地元の会社だから、県外転勤はずっとない。この地元の大学に通って、そして地元で就職し、一生ここから出ずに終わるのだ。    私は違う。悟たち同級生たちとは、私は違う。  私は東京の大学に進学して、一度東京暮らしを経験した。東京では車なんていらない。だから私は車に興味がない。車を持つ男にも特に興味はわかない。  ここを出たくて仕方なくて、逃げるように、故郷を捨てるように行った東京だったのに。  就職のときになって、私は結局ここに戻ってきてしまった。この先何年も都会でやっていけるのか考えたとき、急に怖くなった。特別ここに戻りたかったわけじゃない。他に行くところがなかっただけ。    だからここに帰って来てからも、私の本当の居場所はこんなところじゃないという気持ちが消えない。  結局、私はどこに居ても、そこが自分の場所じゃないような、居心地悪さを抱えて生きている。  悟の話は、カープの試合のことになっていた。今年の戦術はああだこうだと私にはよく分からない話題が続く。適当に「そう」とか「へぇ」とか相槌を打った。ステレオからは、スピッツが流れている。いつまでたっても古びない曲だ。悟は、小学生のころからなぜか知らないけど、スピッツが好きだ。卒業文集か、プロフィール帳か何かに、昔もそう書いていたのを覚えている。     
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