帝釈天のおみくじ

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 祐樹は花凛のアイデアを聞きながら眉を顰(ひそ)めて腕組みをしていたが反論するふうでもなく同意した。  元日は二つの名刹(めいさつ)の本堂に辿り着くだけで疲れ果て、二日は三箇所回っても一枚の大吉すら引けなかった。  事はなかなか上手く運ばない。 ――大吉が二枚出るまでさあ、おみくじ引き続ければいいじゃないか――  花凛は彼の言葉に耳を疑った。インチキ、イカサマ、詐欺をするつもりなのかと責めた。二人の真実の心が通じたときに神様仏様のご加護があるのであって偽りの行為をするのだったらはじめから何もしないほうがましだ。  神田明神では、大吉と中吉で惜しかった。浅草寺では手を取り合って仲見世通りを歩き四十分も並んでやっとおみくじを手にした。  祐樹の表情が強張った。もうそれ以上は見たくも聞きたくもなかった。こんなことってあるだろうか。言葉にならなかった。 (結婚には最悪な時期です。二人の相性も良くない。慎重に考えたほうがいいでしょう)  祐樹は二枚の大凶を小枝に縛りつけた。     
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