帝釈天のおみくじ

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「ビクともしてないよ。震度七でも大丈夫だってさ」  雪は斜めに降っていた。その先には、スカイツリーが佇んでいる。 「僕はどんなことがあってもビクともしないって誓うよ。君と結婚する」  花凛は祐樹の横顔を見てからもう一度しっかりとスカイツリーを見据えた。  冷たい雪の一片(ひとひら)が温かい羽毛に変わった。空中に舞う羽毛が優しく全身を包んだ。  次の帝釈天でどんな結果になろうと二人でともに人生を歩んでいこうと心に決めた。  柴又の駅を降りると『フーテンの寅さん』の銅像が雪を被って立っていた。  参道はまるで寅さん映画のセットそのままだった。両側に古い木造のお土産屋さんや茶飲み処などが軒を連ねる。帝釈天の参道は、雪国のなかにあった。  境内に入る手前に《柴又帝釈天》の石碑があって、どっしりと雪を被った日本瓦屋根の山門が存在感を示している。  大勢の人々が門前で列をなしている。門をくぐればすぐに本堂があるのに行列は遅々として進まない。花凛と祐樹も猫背になって肩を寄せ合って行列のなかにいた。     
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