帝釈天のおみくじ

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 おばあさんはにこやかな表情で言った。花凛はおばあさんの次の言葉を察した。祐樹はもうお団子一本食べ終わっていた。 「その三十年後もいらっしゃったのね。今お一人で」  言葉を継いだ。おばあさんは頷く。 「お若いお二人は未来があるからいいわね。ここの帝釈天様とわたしとはお友だちだからね。何をお願いしたいの。よかったら言ってください。わたしから頼んであげますよ」  おばあさんの話はあまりに自然だった。花凛は元日から今日までの初詣巡りの顛末を丁寧に話した。祐樹も身を乗り出して二人のやりとりを聞いていた。 「大吉二つほしいのね」  おばあさんは簡潔に結論を言った。  そのときだった。フーテンの寅さんと妹のさくらが店に入ってきた。誰が見てもそうだった。お店の客は手を叩いて喜んだ。お正月のアトラクションだった。寅さんとさくらのそっくりさんだ。寅さんは、「おめでとうございます」とものまね声で客席を回っている。さくらも笑顔で会釈している。もうそれだけで心が弾んだ。  おばあさんが手を上げてさくらを呼んだ。花凛と祐樹を指差しながらさくらの耳元で何やら頼みごとをしている。さくらは今度は寅さんに耳打ちをした。寅さんは大きく頷いた。花凛を見て笑った。 ――さあさ、お立会い! 私生まれも育ちも葛飾柴又です。姓は車、名は寅次郎……――     
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