【DM 0】

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 マークをタップすると、そこには一年ほど前からいるフォロワーのプロフがあった。  〈Instarm〉で何かをUPしてフォロワーを増やす、そしてファンになってもらう。そんな営業展開を考えたのは、ボーカルのタツだ。  特に他のアイデアも出ないミーティングで、ドラムもベースも俺も逆らうことはなかった。好きなバンドのカヴァーの一部を一瞬上げるくらい、どうってことないと思ったから。  でもそれは結構めんどくさい上に、ネタがなくなってくる。  一年経って、辟易(へきえき)しだした頃に、彼女からフォローされた。  DMの送り主はその女だった。  @sayo  わかるのはそれだけだ。  彼女のタイムラインには、時々風景や猫の写真が上がる。フォロワーもフォローも一桁。何かを見るだけに〈Instarm〉に登録したのだと思う。  そんな彼女の数少ないフォロワーの一人が俺だった。  やる気のないギター演奏のアップに、彼女はいつもいいねとコメントをくれた。  たいした内容ではない。 (今夜もありがとうございます)  アップした日は、そんな彼女のコメントを待つようになったのはいつからだろう。  一年前、初めて彼女からいいねが付いて彼女は俺のフォロワーになった。     
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