時空の音

【ＤＭ ０】

　その夜、俺がこれまでアップしてきた全てのギター演奏に、彼女のいいねが付いた。
　お知らせには俯いた横顔の彼女のプロフが並んで、ちょっとしたホラーだった。SNSに慣れていない感じがした。

　数日後、彼女にフォローバックした俺は、一番新しいメロウな写真の下にコメントを入れた。

（フォローありがとうございます。リクエスト待っています。）

　そんな社交辞令を真に受けてか、次の投稿のコメント欄に彼女からの初めてのリクエストが。
　それは誰もが知っている古い簡単な洋楽。

　翌日、彼女のリクエスト曲をアップした。
　特に練習の必要もないポピュラーな曲のサビの部分だけ。
　いつものように気怠さを纏ったまま。

（ありがとうございます。感動しました。やっぱり思ったとおりでした）

　その日の夜、遅い時間に彼女からイイねとコメントが着いた。
　なんとなく、引っかかる文面だったけれど、

（お気に召していただけたなら、よかったです！またいつでもリクエストください！）

　そう返しておいた。

　次に彼女からきたリクエストは、俺の知らない曲だった。

　音楽サイトで見つけたその曲は、1960年代の古い難解なインストルメンタル。