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そんな@sayoから届いたDMには、短い文章とふたつのURL。
『お元気ですか?いつもありがとうございます。最後のリクエストをさせてください。
そして私はあなたにもうひとつのお礼をお伝えしなくてはいけませんね』
理美が閉めたドアの前には、彼女に向かって投げた俺の声がまだ転がっている気がする。
優先順位は違うのかもしれない。
それでも俺はひとつ目のURLをタップしていた。
スマホの中の音楽サイトから、アコースティックギターの音がすぐに流れた。
また古い曲だった。
透んだアコースティックギターの響きに動悸が速くなる。
切ない歌声が心の襞に染み入る。
涙が零れても許されるのではないか。
何かが昂ぶってくる。
シンクに凭れたまま動けなくなっていた。
換気扇の回転音と風音に、一定のリズムで雨音が重なる。
スマホから流れる奏は、あたりまえの日常の何でもない音まで巻き込んで、音楽にしてしまった。
調べに身を委ねたまま、二つ目のURLを見つめていた。
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