第1話 プロローグ

2/6
88人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
 西暦2398年の9月、ベトナムのハノイのドンター地区で、暑い中でシャルロット達は『感染者』を追っていた。 ――シャルロット、聞こえる?――  クロディーの声がヘッドギアに内臓のスピーカーから聞こえてくる。 「聞こえるよ、そっちの首尾はどう?」  抑揚を抑えた声で訊ねた。 ――『感染者』のアンドレ=ラルペリが自宅から出たよ。向こうはこっちの動きに気が付いてないみたい、強化タロススーツ様様だね―― 「私達の強化タロススーツは当局から最新の物を支給されているもの、当然だわ」  シャルロット達が着ている黒い強化タロススーツには、筋肉増強の他に防御希望やステルス機能まで付いている。 ――ステルス機能まで付いている強化タロススーツを見つけるなんて、まぁ現状無理でしょうね――  別の声が入ってきたと思ったら、ニコールの声だった。 ――気が付かれる前に捕獲するよ、人混みから外れたところで作戦開始だ。いいね――  この声はメンバーの内で年長のオリヴィエの声だ。  三人は揃って――了解――と返事すると、『感染者』アンドレ・ラルペリに気が付かれないように、うだる様な熱気を放つ、かつての面影が残らない近代的な真夏の建物の屋根を、跳躍して移動していく。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!