第8話 犠牲者

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「いいか、我々がやらなければどれほど『感染』が拡大したと思う。我々『スターファントム』は全人類の内200人ほどだ。たったそれだけの人数で地球規模に広まってみろ、どうあがいても人類に勝ち目はない。これだけの犠牲者で済んだと思わねばならん」  それだけ言うと、背もたれに体重を預けて、椅子を回転させると後ろを向いてしまう。 「そもそも殺さないことが目的なのに、被害者である『感染者』を殺す意味ってなんなんですか? そりゃ、感染を拡大させない為の処置だったことは分かりますが。それでも、隔離したりとかの前段階の処置も必要だったんじゃないですか?」 「くどい。あの場、あの時にはああするしか方法が無かったんだ。理解したまえ」  振り向きもしないままニルスは言いっぱなしにして、部屋を出て行くようにと右手を振った。  釈然としないが、これ以上話しても言葉が返ってこないことを理解したシャルロットは、部長室を後にした。
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