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「ただいま戻りました~~。あ、鑑識の奴が居る。丁度良いや。気になるからこれ、時間があったらでいいから調べに行っといて欲しいんだけど!」
「仕事ですか?」
「例の自白しない案件! 時間の問題で自白するにしても不可解な事はまだ多いし、あんだけ自白もしないしさ……。だから現場周辺の聞き込みとかもしてきたんだよね。そしたらさ、あったんだよ。一部分だけ黒い土質のある空き地が、近くに! だから採取してきた!これさこれさ、同じカイロだとしたら、犯人は別で、これは捨てられた凶器って可能性もあるよね!」
「…………え?」
「帰還しましたー……。被害者が殺害される数時間前まで、あの部屋に居たとされる友人宅に聞き込み行ったんですが。留守でした。僕の主観を述べさせて貰えば、間違いなく第二容疑者候補ですよ!」
「……………………。」
「……? おい、お前大丈夫か?」
俺は血の気が引いていくのを感じた。ついさっき渡された証拠品の中身が分かっているからじゃない。第二容疑者候補が上がった事にでもない。
俺は埋まって行く空席に、背筋を凍らせていた。
俺はそんな訳が無いだろう、と目の前の刑事に頼んだ。取調現場を見せて貰えませんか、と。
「別に良いが、まぁ知っての通り、マジックミラー越しだぞ。」
中に居たのは件の家主と、数人の刑事。
それは、先刻まで居た捜査班の、空席の数と同じだ。
この捜査班の。刑事の数はこれで全員らしいのだ。
だとしたらーーーー誰だ?
『…………相当の恨みがあるんだろうな、犯人には。』
事件当日に俺と現場に居た、あの男は誰だ!?
刑事で無いのなら、誰だったんだ!?
「我儘言って……すみません。第二容疑者候補の、顔写真はありますか。」
俺が震える指で写真を受け取り、その写真の顔に見覚えを感じている最中にも、取調は続いていた。
『お前が! 使い捨てカイロを袋詰めにしたブラック・ジャックを作って! 被害者を殺したんだろう!?』
『だから何の話だよ!? なんだよブラック・ジャックって、マンガの無免許医の事か!?』
第二容疑者はとっくのとうに、海外への高跳びを果たしていた。
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