赤い光

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灯籠は、死者の魂を導く標。今宵もさ迷う魂が温かい光に寄ってくる。 「ささら、竹が用意できた。」 おかっぱ頭に赤いリボンを結び直しながら、たまきは奥の座敷へ声をかける。襖が開き、中から黒い着物のささらが出てきた。竹を一瞥すると、たまきの方へ歩みよりリボンの位置を直してやる。 「ありがとう。今日はもう帰って大丈夫よ。」 たまきの頭を撫でて、ささらは竹を抱えて作業部屋へと引っ込む。ノコギリと彫刻刀などの道具が散らばった作業台へ竹を置いた。 「・・・生まれ出るは罪深き。汝の業、数えたもう。」 ささらが唱えると竹の上に模様が浮かび上がった。その模様に沿って、ささらはノコギリや彫刻刀で刻んでいく。やがて出来上がったのは、蓮の花の彫られた竹灯籠。ささらはそれを丁寧に持ち上げて縁側から庭へと出ていく。カラリコロリと進む先には、大きな川が流れている。川を右手に曲がりしばらく進むと、一艘の船が止まっていた。川岸にはちょうど竹灯籠を置くための石塔がある。ささらがそこへ優しく竹灯籠を置いてやる。すると、何もしないのに橙色の炎がボウッとついた。炎がついたのを見ると、ささらはホッと一息ついて、カラリコロリと来た道を帰っていく。 1度だけ、ささらは振り返る。ユラリユラリと青い炎が船の方へと寄ってきているのが見えた。その光景にささらの口角が少しだけ上がる。彼女にとって何よりも幸福な瞬間なのだ。部屋に戻る足音は行きよりも軽かった。
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