第1章 散歩道にて

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公園の入り口を出た所で、順子はルビーを忘れて来たことに気づいた。 順子は少し迷ったが、置いて帰る訳にもいかない。 仕方なく、恐る恐るけやき並木に引き返して行った。 「ルビー、ルビーいらっしゃい」 順子は誰かに聞かれない様なか細い声で、ルビーを呼んだ。 しかし、ルビーの鳴く声はしない。 「ルビーったら、お願いよ」 並木道の真ん中辺りで、捨てた懐中電灯の光がゆらゆらと、木の幹を照らしている。 と、そこにルビーのリードが照らされていた。
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