ありがとう。

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 葬儀を終え、四十九日を前に弔問に来る客足も一段落し、改めて家の中を見回す。 ーー 線香の香りが漂うリビング。 ーー 二つのベッドが並ぶ寝室。 ーー 二人が並んで立てるキッチン。 「広いなぁ……。」  そう口にした途端、体から力が抜け私は重力に負けるようにリビングの床に横たわる。床暖房を入れているはずのフローリングの床がとても冷たく感じる。  マンションの一階のこの家、この空間には、もう私しかいないのだ。  想定していたはずだったのに、現実となるとまったく受け入れることができないでいる自分に、やるせなさを感じながら、しばらくそのまま動く気が起こらなかった。 最近こういう事が増えたと思う。  冬の晴れ日、太陽の位置はゆっくりと移ろい、窓から優しく差し込む光が次第に目の前の床に近づく。ふと私は、床面にうっすらと積もるホコリに気がついた。いつもこういうことに気づくのは妻だったので、掃除はいつも妻まかせだった。とは言っても、妻が掃除機をかけるのではなく、妻もまたロボット掃除機に任せていた。 「たまには掃除しなきゃな……。」  そう思うも、今の私は体を起こすのにもそれなりの気合を要する。 なんとか立ち上がった私は、やれやれと口にしながらダイニングにあるロボット掃除機サンバの元へと向かう。ロボット掃除機は緑色の充電の完了ランプを煌々と光らせていた。
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