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妻は初期型のこいつの事を"茶々"と呼んで可愛がっていた。
歳を重ねて体を動かすのが億劫になったせいもありロボット掃除機は非常にありがたい。
同年代の知り合いは懐疑的な反応を示すが、少なくともうちには必要なものだった。
私が起動ボタンを押すと、ロボット掃除機の茶々は電子音を鳴らした後、やや騒がしい音を立てて動き始める。いつもはうるさく思うその音だったが、今は少しばかり気が紛れる。
◇
ロボット掃除機を買おうと言ったのは妻だった。
妻の体に負担がかかるので、子を授かろうとすることもなかった私達。
寂しさを紛らわすため、何かしらペットを飼うことを提案したこともあった。
しかし妻は『新しい命を預かる勇気がない』と言って聞かなかった。
そんな妻にとって、機械である茶々はとっつきやすく、いつしか愛情を注ぐ対象となっていた。
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