ありがとう。

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◇  コーヒーを入れながら待っていた私に、掃除をしていた茶々が掃除の終了を告げる。 思いのほか早いその終了に振り向くと、少しばかりどきりとした。  茶々はリビングの妻の遺骨の前で止まっていたのだ。 ーー 今まではもう少し動いていたと思ったが……。 これまで注意深く観察していたわけではないが、かつてはリビングとダイニングを一通り掃除をしていたのは覚えている。 ーー もう古いし、バッテリーがへたってきているのだろう。 初期型の茶々は自動でホームベースに戻ることができない。 掃除が終わったあとには決まって妻が茶々を抱えあげて、ホームベースへと連れて帰っていた。 「世話が焼けるな……。」 そうつぶやきつつも、ちょっとした親近感を覚えながら私は手を伸ばし茶々を持ち上げた。 その時、私の頬を一筋の涙が伝った。
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