プロローグ

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プロローグ

「オマエは、死に愛されている」 ギシリ、とベッドがなる。彼女が動けば、それに合わせて更なる大合唱を始める。 「故に、死神にも愛される」 首に回る白い右腕は、とても細くて弱々しい。まるで、栄養を失った大根みたいだ。 しかし彼女は、見た目にそぐわない力で締め付けてくる。喉が狭い。苦しい。 反射的に、ヒュゥと息が漏れた。それを見て、彼女は嬉しそうに唇をつり上げた。下品な黄色い歯が顕になる。 「ハサミをとれ、ノリアキ。まだ死ぬわけにはいかないだろゥ?」 彼女の言う通りだ。僕はまだ、そちらにはいけないよ。 瞼を焼く手招きを払いのけ、ベッドボードに指を這わせた。意図を理解した彼女は、更に笑みを深め、目的のものを手渡してくれる。 空いた左手に握られた、赤い柄のハサミ。それを受け取り、躊躇なく動かす。 チャリン。 奇妙な金属音は、まるでコインを落としたときのよう。だが、それでいいのだ。 「今ので一人死んだな」 僕が生きるために払う、対価の証だから
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