第2章 聖龍帝と赤龍王

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「とにもかくにも、園遊会は開催された。」 コジーはお茶啜りながら、話を続けた。 園遊会当日は、大変いい日和で、会場は王宮の中庭。其処に様々な、料理を提供する屋台を設えて、園遊会を盛り上げていた。 会場には、聖龍帝はもちろん、他の三龍王も出席していた。 それにお供の従者達や、王都の顔役たちも招待されて、会場は大いに賑わっていた。 園遊会には、大道芸人も呼ばれ、園遊会に花を添えていた。 園遊会も、そこそこ進んだところで、赤龍王が侍従長に合図を出した。 侍従長が、会場奥に設置した、特設ステージに駆け上がり、会場全体に聞こえるであろう大声で、【実際には、声でなく思念波の様なもの】呼び掛けた。 会場にいた全員が、ステージに注目した。 ステージの四角に置かれた、篝火台に火が灯された。 そして今まで、カーテンで仕切られていたステージの、そのカーテンが取り除かれた。 取り除かれたカーテンの、その奥にいたのが、城島であった。 城島の前には、ガッシリとしたテーブルと、その上に、大きなお鉢が置かれていた。 そして城島の両隣には、大きな寸胴鍋が火に掛かったいた。 片方の鍋には、たっぷりの湯が、グラグラと沸いていて、もう片方の鍋には、黄金色の液体【多分上湯スープ】が、タップリと張られていた。 城島はテーブルの下から、細い注ぎ口の付いた壺を取り出した。 そして壺の中身を、ゆっくりと鉢の中へと注ぎ入れた。 そして素早く、鉢の中を両手で掻き回した。 「クオオオオッ!」 城島の気合いが、迸る。 次の瞬間、城島の両手に、巨大な玉が抱えられていた。 其れを城島は、力を込めて練り始めた。 そう、城島は麺を打っていたのだ。 普通麺打ちは、麺棒と打ち板とで、麺を延ばしていき、麺切り包丁で細く切っていく。 城島は麺棒を使わず、極限まで麺を延ばし、麺に仕上げていく。 広東風、龍髭麺のやり方である。 そして出来上がった麺を、手早く湯で上げる。辺りに何とも香しい、芳香が漂い出す。
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