6人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
神山仁一郎は、一流と言われている、大学をストレートに合格して、一流と言われている、新聞社に就職。何年もしないうちに、政治部の取材員に抜擢。
しかも、与党の大物議員に気に入られ、その議員の番記者を、拝命することとなった。
順風満帆の人生が、切り開かれた!
と思った矢先、神山はすべてを捨てて、日本を飛び出した。
いや、日本どころか、此の世界から飛び出していた。
神山仁一郎32歳。独身で、彼女が2・3 人はいたはず。
とは、彼の同僚の佐々木浩太郎の弁である。
神山が行方不明になってから、3年位たったある日、仕事の都合で、中国は上海に来ていた佐々木は、繁華街の外れにあった、安宿の厨房で、大きな中華包丁を操る、見覚えのある男に出逢った。
髪の毛を短く刈り込み、浅黒く日に焼けて、かなり痩せてはいたが、間違いなかった!
「おい!神山。」
佐々木浩太郎は、回りも憚らず、その痩せた男に大きな声を掛けていた。
その安宿の酒楼で、神山仁一郎と佐々木浩太郎は、静かに酒を飲んでいた。
「此の宿で働き出したのは、つい先月からでね‥‥‥。」
神山仁一郎は、ゆっくり杯を干すと、ため息のような、独白をしだした。
3年前、何もかも上手く行き、人生の絶頂にいた神山を、一種の魔が襲った。
「あの日、アノ代議士先生の家に、取材をかねて、挨拶に出向いて‥‥‥。」
何時ものように出社して、アノ代議士の先生の家に行く途中、妙に腹が空いてることに気が付いた。
「そう言えば、昨夜は由梨花と‥‥。」
頑張っちゃた後で、結構深酒して、朝飯もろくに摂ってない。
何処かにコンビニでも?と、辺りを見渡した。生憎、高級住宅地の中で、コンビニどころか食事するところも無い。
食う物がない。こうなると、無性に腹が減ってくる。
何か無いか?と、辺りを見渡したら 、小さな公園が、目に入った。
その公園の中に、小さな屋台が置かれているのに、気が付いた。
最初のコメントを投稿しよう!