第三章 王宮の、熱い夜。

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第三章 王宮の、熱い夜。

甘い香りが、漂っているその部屋のドアが、ゆっくりと開いた。 今朝、着替えを持ってきてくれた、あの四本腕のメイドが、立っていた。手にお盆を抱えて、その盆の上に、鍋「?」が乗っている。 「お食事を、持ってきました。」 そう言うと、音も立てずに、部屋の中へと入ってきた。 持ってきた盆を、ベッド脇のサイドボードに置くと、ベッドの下から、テーブルを引っ張り出した。 テーブルを軽く下に押すと、ポンっと飛びあがり、腰の高さで安定した。 「へー、そう言う仕掛け。」 テーブルの上にでお盆を置いて、鍋の蓋を取った。 フワッと湯気が上がり、シチューの様なものが、現れた。 何とも食欲を、刺激する香りである。 四本腕のメイドが、大きめのスプーンで、シチューを皿に盛り付けた。 皿の上には、シチューの他に大きめの煎餅の様なものが、乗っていた。 多分、クルトンだろう。 「どうぞ、召し上がれ。」 シチューを勧めるメイドに、 「ええと、君の名前は?」 神山は、四本腕のメイドに、名前を聞いてみた。 彼女は神山の顔を、ジイッと見つめると、 「エラ、私はエラ・ノラ。」 「エラと言うのか、俺は神山‥‥‥。」 神山は名前を言いかけて、息を呑んだ。 エラが神山をジッと、見詰めているのが、何故か気恥ずかしくなった。 「頂きます。」 間が持たなくなった神山は、シチューを口にした。 今まで食した事の無い、味であった。 匂いは、スパイスが佳く利いている、エスニック風だが、味は今まで味わった事の無い、パンチの利いた味だった。 クルトンをスプーン換わりに、シチューを口に流し込む。 途端に、身体中が火照ってきた。 頭の天辺から、汗が滴り落ちる。 それでも、シチューを掻き込む手が、止まらない。 皿に盛られた、シチューを平らげて、 「おかわり!」 神山は、皿をエラに差し出した。 エラは、ニコリと【したように、見えた】して、皿を受け取った。
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