第三章 王宮の、熱い夜。

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神山は、シチューを全て平らげて、汗でグッショリの自分に気がついた。 「この部屋の正面に、浴室が御座います。着替えを用意致しますから、どうぞ汗を流して下さい。」 エラがそっと立ち上り、部屋のドアを開けた。 なるほど、部屋の向かいにまたドアがあって、そのドアを開けると、ちょいひろめの浴室になっていた。 「こいつは、有難い。」 神山は、着ているものを脱ぎ捨てるや、浴槽の中に飛び込んだ。 「ウホーーーー!」 神山は、奇妙な叫び声を上げた。 それは水風呂だった。 「こいつは、気持ちいいぜ。」 神山の全身が、炎に焙られているかの様に熱い。その身体を、冷たい水が優しく、そして鮮烈に冷ましてくれた。 神山はそれほど、入浴に拘りがない。 所謂、カラスの行水で、真冬でもシャワーで済ます事が、度々である。 この時も、大きな浴槽に飛び込んで、手のひらで身体を擦って、それでも済ますつもりだった。 ところが、浴槽から出て、身体を拭こうとして、汗が退いてない事に、気がついた。 それどころか、身体が燃える様に熱い。 「お邪魔します。」 いきなり浴室の木戸が開いて、湯浴み着を着た、エラが入ってきた。 「お背中、流します。」 そう言うと、浴室から出ようとしていた神山の手を引き、浴室中央に戻した。 「失礼します。」 神山がエラに、浴室の真ん中の腰掛けに、座るように促したと同時に、 あと二人エラと同じ格好をした侍女が、浴室に入ってきた。 神山を三人掛かりで、洗い始めた。 龍刑人は、と言うより、エラ達は背が低い。神山の胸くらいしかない。 一瞬、子供なのか?と思ったが、裸の神山を見ても、物怖じしない。【龍刑人とは、かなり違うのか?それとも人間の裸には、興味がないのか?】 龍刑人は、大人も子供も顔で歳がわかり辛い。うんと年若か、年寄りなら、其れなりに神山にも分かるが、エラ達が一体幾つなのか判断がつかない。 湯浴み着を着ているので、身体の線は確認できる。どうやら、其れなりの歳のようだ。 神山の身体を隅々迄洗い、エラ達は神山をマッサージし始めた。 頭の上から、足の先まで。隅々を丹念に、マッサージしていく。 マッサージを受けるに従い、身体中の熱が、一点に集中していく。
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