第1章 屋台のオヤジ、跳ぶ。

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神山は、その屋台にフラフラっと近づいた。勉強一筋だった神山の、唯一の趣味。 食べ歩き。 しかも高級店とか、美食を追求するのではなく、屋台とか、B級物の食べ歩き。 特に、屋台のラーメンには、ちょいうるさかった。 大学時代に、都内はおろか、関東一円の屋台のラーメンを制覇した。 その内、屋台のラーメン記でも、執筆しようかなっと、考えていた。 その屋台には、人影がなかった。 こんな高級住宅地の真ん中に、ラーメンの屋台。下町の路地裏なら、納得も行くが。 近づくと、フワッと出汁の香りが、漂っている。 「鶏と煮干し、後アゴかな?」 神山は、匂いだけで、出汁の材料が解るよううになっていた。 「何だろ?覚えのある香りだな?スパイスかな?」 以前何処かで嗅いだ、不思議な香りに、警戒心を奪われていた神山は、ウッカリその屋台の鍋を、開けてしまった。 「ヽ(♯`Д´)ノコリャーッーーーーー!」 その時だった。 その屋台のオヤジらしき、男が怒鳴りながら、走ってきた。 短く、刈り上げられた頭。 浅黒く、日に焼けた顔。 太い首と、太い腕。 ねじりハチマキをしていなかったら、プロレスラーと言っても、通用しそうな巨漢が駆け寄って来た。 「商売モン、いじるな!」 怒号って言うのは、正にこの事だろう。 腹の底に響くような、野太い声が叩きつけられた。 「ウワッ!」 驚いた神山は、持っていた鍋の蓋を、落としてしまった。 そのゴツイおっさんの顔が、目の前に迫ってきた、その時だった。 「ドン!」 重苦しい衝撃音が、鳴り響いた。 一瞬何が起こったかわからない。 衝撃の後、目に入ったのは、あのオヤジが空を飛んでいる 。 いや、飛んでいるのは、神山もだった。 屋台が爆発して、神山と屋台のオヤジが、空を飛んでいるのだった。 完全に常識を、逸脱している。 あんな小さな屋台が爆発して、大の男が二人吹っ飛ぶはずがない。 それなのに、神山と屋台のオヤジが、天空高く巻き上げられ、そして何処までも飛ばされていく。完全に漫画だ!
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