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神山は、その屋台にフラフラっと近づいた。勉強一筋だった神山の、唯一の趣味。
食べ歩き。
しかも高級店とか、美食を追求するのではなく、屋台とか、B級物の食べ歩き。
特に、屋台のラーメンには、ちょいうるさかった。
大学時代に、都内はおろか、関東一円の屋台のラーメンを制覇した。
その内、屋台のラーメン記でも、執筆しようかなっと、考えていた。
その屋台には、人影がなかった。
こんな高級住宅地の真ん中に、ラーメンの屋台。下町の路地裏なら、納得も行くが。
近づくと、フワッと出汁の香りが、漂っている。
「鶏と煮干し、後アゴかな?」
神山は、匂いだけで、出汁の材料が解るよううになっていた。
「何だろ?覚えのある香りだな?スパイスかな?」
以前何処かで嗅いだ、不思議な香りに、警戒心を奪われていた神山は、ウッカリその屋台の鍋を、開けてしまった。
「ヽ(♯`Д´)ノコリャーッーーーーー!」
その時だった。
その屋台のオヤジらしき、男が怒鳴りながら、走ってきた。
短く、刈り上げられた頭。
浅黒く、日に焼けた顔。
太い首と、太い腕。
ねじりハチマキをしていなかったら、プロレスラーと言っても、通用しそうな巨漢が駆け寄って来た。
「商売モン、いじるな!」
怒号って言うのは、正にこの事だろう。
腹の底に響くような、野太い声が叩きつけられた。
「ウワッ!」
驚いた神山は、持っていた鍋の蓋を、落としてしまった。
そのゴツイおっさんの顔が、目の前に迫ってきた、その時だった。
「ドン!」
重苦しい衝撃音が、鳴り響いた。
一瞬何が起こったかわからない。
衝撃の後、目に入ったのは、あのオヤジが空を飛んでいる 。
いや、飛んでいるのは、神山もだった。
屋台が爆発して、神山と屋台のオヤジが、空を飛んでいるのだった。
完全に常識を、逸脱している。
あんな小さな屋台が爆発して、大の男が二人吹っ飛ぶはずがない。
それなのに、神山と屋台のオヤジが、天空高く巻き上げられ、そして何処までも飛ばされていく。完全に漫画だ!
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