第五章 強襲、赤龍王園遊会。

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第五章 強襲、赤龍王園遊会。

園遊会の、当日になった。 朝早くから、王宮の小間使い達が、小忙しく立ち回っている。 園遊会自体は、昼過ぎからの開始であるが、レストルームの増設やら、テーブルの増設に、かなり時間が取られていた。 前日の夕刻になって、白龍帝側から参加人員の大幅な増員が、告げられた。前回の園遊会で、興が載った白龍帝が、催物の追加を提案してきた。 白龍帝が前々から、格闘技に興味が有り、定期的に格闘技の大会を催していると言う。 それで、いきなりなのだが、園遊会で格闘技大会を行いたいと、言ってきたのだ。 園遊会の会場の真ん中に、特設ステージと言うか、完全に八角形のリング。 オクタゴンバンデモニア。 八角形の魔境。 多分選手が通る、入場ゲートにそう書いてるはずだ。 いまいち、此方の言葉【言葉は、使われていない】、と言うか、文字を解読できない神山は、勝手に思い込んだ。 特設リングの設営と、同時進行で園遊会の屋台も設営されていく。 まるで少し前に流行った、屋台村プロレスである。 神山も四本腕に混じって、忙しなく動いている。 やることは、前もって決めてあったが、背が高いのと力があるのとで、ちょいちょいアッチコッチから、 「手伝ってくれ!」 と、頼まれる。 神山も、頼まれると、嫌とはいえ無い性格で、重宝がられていた。 元々、担当部署は城島のサポートで、それも大したスキルを、用しない。 それに神山は、お祭り大好き男らしく、園遊会の設営が、楽しくて仕様がない、と言った感じである。 お昼過ぎになって、一応会場設営と、料理のしたくが形になった。 後は客を待つ、ばかりである。 会場設営のスタッフに混じって、食事をとっていた神山を、城島と耳ながの王宮執事長が揃って、呼びに来た。 「一寸、使いを頼まれて欲しいんだが‥‥‥。」 城島が頭を掻きながら、そう言ってきた。 「詳しくは、ロードン執事長が説明するそうだ。」 はじめて知る、此の耳長小獣人は、ロードンと言うのか。 「神山殿と言ったか?ワシは代々赤龍王に仕えている、エドル・ロードン・ガイデ。実は神山殿に折り入って、頼み事が‥‥‥。」 小獣人も龍形人同様、会話に言葉を用いない。思念波の様なものが、直接脳に声として届くのだ。 此の、会話方法の凄いところは、周りが騒がしくても、しっかり通じるところと、コツを掴めば、割りと簡単に使いこなせる事。 現に神山も、此の二日位で、一寸辿々しいが、使いこなしていた。 ロードン執事長の言うことには、今日の園遊会の主賓、白龍帝の到着が遅れそうなので、飛行龍での向かいを寄越してほしい。と、言う。 「多分、そいつは言い訳だな。」 ロードン執事長の話に、城島が割って入る。 「飛行龍に、乗りたいだけなんだな、あのセンセイは!」 そう言った。 あのセンセイ? その言葉が、引っ掛かった。 「あのセンセイって?‥‥‥。」 そう問いかけたが、 「兎に角此方は、手一杯でな。神山殿に白龍帝を、迎えに行って貰えれば、大助かりなんじゃ。」 と、ロードン執事長が、神山の問い掛けを、遮る。 それに、飛行龍に乗れるとあっては、是が非にでも、である。 「でも、俺なんかでいいんですか?」 神山の問いに、 「いやいや、神山殿がうってつけなんじゃ!」 そう、ロードン執事長が、答える。 そう言われては、嫌とは言えない神山である。 自室にと、宛がわれた部屋に戻ると、用意された服へと着替えた。 今まで着ていた、煤けた作業着を脱いで、真新しい灰色のアンダーシャツと、同色のパンツに袖を通す。 そして今回は、一応外交使節なので、赤と青を基調とした、長めのジャケットが渡された。 それに今度は、ターバンも黒と赤が基調の物になっていた。 この着替えも、エラ・ノラが手伝ってくれている。 特にターバンは、正式な巻き方が在るようで、神山に手出しを許さない。 エラ・ノラの手際のよい作業のお陰で、あっという間に、仕度が出来上がった。 何処から見ても、立派な外交使節。ラーメン屋の弟子には、見えない。 神山はそのままの格好で、王宮とは別棟の、飛行龍がプラットホームに、上がった。 プラットホームには既に、飛行龍、ガウカンが既に待機していた。 此の国には、三種類の飛行龍が生息していた。ムサ、プテロ、そしてガウカンである。 ムサは猫位の大きさで、普通に街中にいた。 飛ぶと言うよりは、滑空する程度。 高いところにさっさと登って、其所から翼を広げて、滑空する。 次に大きいのが、プテロ。大型の鸛位の大きさで、昔は列島の南部。詰まり赤龍王が統治する、此の地方に多く生息していた。 食性は鷺や鶴に近く、両生類や魚類を主食としている。 ムサよりも、飛行に適していて、沢沼地にサーっと飛来して、サッと飛び去る。惜しむらくは、環境が悪化して、ここ数年で生息数が、極端に減っているそうである。 そして大型の飛行龍、ガウカンである。 体長12メートル。翼長15メートル。体高3・5メートル。大昔の翼龍と言うより、ファンタジーの有翼ドラゴンである。ドラゴンよりも首が、細くて長い? 神山達を、赤龍王の王宮に連れてきてくれたのも、此のガウカンである。 ガウカンは元々、此の世界では渡り鳥宜しく、大陸間を移動する生物で、竜宮列島には年に数頭が、繁殖のために飛来してくる。 乗用として、飼育している国は多いが、乗用としては赤龍王が所持している、パラ・ガウカンが一番巨大である。 ガウカンは4種類いて、一番生息数が多い、チラ・ガウカン。パラ・ガウカンの半分くらいの大きさで、主に1人乗りである。 次に大きいのが、ペトラ・ガウカン。チラ・ガウカンよりも一回りおおきくて
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