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神山は腹が減っていることを、思い出した。得たいの知れない食い物を、口にするのを少し躊躇ったが、城島が旨そうに食らっているのを見て、思わず口にした。
「甘い!」
今まで食したことのない、甘美な味。
神山は、その真っ赤な果物を、夢中になって貪った。
更にテーブルの上の、様々な食い物を、手当たり次第に口にはこんだ。
更に、壺の中から、なかなか芳しい匂いに誘われて、壺の中身を、側にあった器に注いでみた。鮮やかな、オレンジ色の液体が、器を満たした。
「オレンジジュース?」
神山は怪訝に思ったが、構わず口にした。
城島が壺ごと、口にしている。
オレンジジュースでは、なかった。が、遥かに喉ごしがよく、且つ濃厚な味わいが、舌を支配した。
神山は、一気に飲み干した。
「フイイーー!」
喉の奥から、鳥のような音が、絞り出る。
もう一杯、器についで飲み干した。
微炭酸のスパークリングワイン、と言った感じの、濃厚なのにさっぱりとした飲み口が、後から後から味わいを求めて、もう一杯、もう一杯と誘ってくる。
「おい、口当たりがいいからって、ヤリ過ぎると、ひっくり返るぞ!」
城島の忠告が、入ったときには、時すでに遅く、神山は大の字にひっくり返っていた。
「言ったこっちゃ無い。」
そうぼやいた城島の言葉が、遠くに聞こえて、闇に溶けていった。
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