プロローグ

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箱の中に綺麗にしまい、 少女はそっとその箱の上に手を重ねた。 ふぅ と落胆の意を込めた溜息を一つついたのと、 扉を軽く叩く音が、広い部屋に響いたのは ほぼ同時だった。 「はい」 高く 透き通るような声で少女は応える。 ―失礼致します。 お嬢様、出発の支度は出来ましたでしょうか? 「ええ。 でも、もう少しだけお別れの挨拶をしていたいわ。 だって 次の『新しい家』でも、ちゃんとやっていけるかどうか不安なんだもの。」 そんな少女の冗句にメイドが手に口を軽くあて、クスクスと笑ってみせた。 ―そんなに名残惜しいものではないじゃあ ありませんか。 大丈夫ですよ。お嬢様ならきっと直ぐに新しい環境にも馴染みますわ。 「そうね。そしてまた直ぐに別の『新しい家』へ移り住むのよね。」 そう冷たく 早口に言い放った少女の目は 笑っていなかった。 ―…お嬢様。 少女の予言を憐れむかのように、 少し眉を下げるメイド。
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