神様神様

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ああ神様、 あの瞬間へ巻き戻して下さるなら 僕はもう一度、あの人の髪を梳くでしょう 毛先でゆるく結われた あの柔らかな温もりの中に これ以上ない優しさで右の手の指を差し入れて ああ神様、神様 あの瞬間へ巻き戻して下さるなら 僕は差し入れた指をそっと下へ滑らす 中指薬指の第二関節に当たった輪ゴムは 捻じれた形のまま、ぽとりと 床に落ちる 彼女は輪ゴムに一瞥をくれたあと 不思議そうに僕の顔を見上げる ”メビウスの輪は、切れたわ” ああ神様、神様神様神様 あの瞬間へ巻き戻して下さるなら 僕はもう一度、あの人の髪を梳く 願いはただそれだけです 神様、神様、神様神様神様神様神様 あの瞬間へ巻き戻して下さるなら 僕は神様のように優しく、この右手で あの人に触れることを誓います。
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