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崩れゆく平凡
榛に「虐めてやる宣言」されてからも、校内の至る所でヤツを探している俺。
だけど、決して、トゥンクするために探しているのではない。ヤツの姿が見えたら、絶対に見つからないよう、もし見つかっても即座に逃げれるように、だ。
しかし、部活ではそういうわけにも行かない。
とりあえず、今のところは避けに避けまくって危険を回避している状態。
幸い、学年も違うし、二人きりになる状況が無いのが救いだ。
「今日は1年チームと2年チームでミニゲームやってもらうからなー。各学年のスタメンは前に出ろー」
キャプテンの合図で、それぞれのメンバーがコートに並ぶ。
俺の向かいに榛が並んでいて、一瞬目が合うが、俺は光速で目を逸らす。
あっぶねぇ!目が合ったら死んじゃうとこだったろうが!なんでこっち見んだよ、こえーよ!
ピーーーー!
ホイッスルと共にゲームが始まり、2年が得点をリードする試合運びになっていた。
バシッ
俺はゴール下でパスを受け、シュートしようと振り返ったその時、背後から榛がディフェンスしているのが目に入る。
くっそ、邪魔なんだよでけーのが!見てろよ、先輩の意地見せてやっから・・・
「あんなあからさまに避けられたら傷つくんだけど」
え?
間近に榛のさみしそうな顔があって、ぎょっとする。
その一瞬をつかれ、ボールを奪われてしまった。
「なにやってんだよ、あき!ボサっとすんな!」
チームメイトの怒号が飛ぶ。
その後の俺は、榛の寂しそうな声と顔が頭から離れず、ゲームに集中できなかった。
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