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ピーーーー!
「ハイ、おつかれー、2年チームの勝ちー。次、控えチーム整列ー!」
「あき、途中からどーしたんだよ、動き悪かったぞ?」
「ごめん、なんかぼーっとしちゃってさ。寝不足かな」
「お前、ちゃんと寝ろよ~!寝る子は育つんだぞ?だからお前の成長止まってんだよ」
チームメイトで同じクラスの松田が、そういって両手で俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてからかう。
松田にぐっちゃぐちゃにされた髪を直していると、ばちっ、と榛と目が合った。
なんで、こっち見てんだよ!
すぐに目を逸らしたが、まだ榛の視線を感じ、おそるおそる榛の方を向く。
え?なんでそんな悲しそうな顔すんだよ・・・
明らかにしょぼんとしている。榛は、寂しそうに今度は自分から目を逸らし、膝の間に頭を項垂れて壁際に座った。
え、なんなの・・・?俺が悪いみてぇじゃん。
いや、そもそも、ガキの頃虐めてた俺が悪いのか?
傷ついた、って言ってたよな、あいつ。
俺、昔の事、ちゃんと謝ってないじゃん・・・
よし!
「榛」
「なんすか・・・」
項垂れる榛の頭上から声をかける。
「あのさ、今日、部活終わったらなんか食ってかねぇ?」
さっきまで寂しそうだった榛が、バッと顔を上げ、ニッコニコになる。
「行きます!」
きゅん・・・
いやいやいやいや、きゅん・・・じゃねえよ!
おさまれ心臓!
榛も、もしかしたらやりすぎたって思ってるかもしれないしな。
よし、ラーメンでも食って仲直りしよう!
その時の俺は、知らなかった。
あのニッコニコの裏側に潜んでいるものがあったことを。
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