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大御所が歌い終わると、「みすちぃがーる」のプロデューサーがゲストで登場した。
司会者にインタビューを受けている。
「それにしても敏腕だよな。アイデアがすごいというか、うまく仕掛けるというか……。良かったな、ユリ。こんな人がプロデューサーで。なんか嫉妬しちゃうよ」
ユリはフォークでプチトマトを突き刺し、しょぼくれた顔をしている直紀の口に運んだ。
「もっと大事なものがあるよ」
「えっ?」
「いくらプロデューサーがすごくても、あなたには負けるわ」
「なんで、どうして? 慰めはいいよ」
「だって、あなたのおかげでしょ。わたしがテレビに映ってるのは」
ユリはそう言うと、プチトマトをまたフォークで突き刺し、今度は自分の口に運んだ。
直紀は自分の顔が赤らんでいるのではないかと心配しながら、せいいっぱい何食わぬ顔を装って言った。
「まぁ……。もう少しがんばってみるか」
〈了〉
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