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「出口」をくぐる。
輝く霞。この光が、あの人の髪の、あんなに暗い色さえも飲み込んだのか。
……君は選ばないと思っていた。
一冊の本を片手に去っていく、彼らとは違うと思っていた。
私が違う私になって、この図書館に戻ってきたとき、もしも君が隣に座ってくれたなら。
その時は、君と一緒に生きられる物語を探そう。
君が受け入れてくれるなら、二人でその本を持って、この出口に再び立つ……。
他愛無い空想と共に歩いていると、次第に何も見えなくなってきた。
全てが滲んでいく。
たぶん、涙というもののせいだろう。どの物語にもそれは現れたから、私にだって訪れてもおかしくはない。
泣くつもりもなく泣きながら、私は忘却を求めて生まれ落ちる。
何を忘れたいのかは……もう、よく分からない。
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