魔王のくせに

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魔王様は俺の胸の中にいる間、ピクリとも動かなかった。もちろんその時の表情はうかがい知れなかったけれど、彼女が今どんな顔をしているのだろうと、この時はそればかりが気になって仕方がなかった。 「あ、すみません。これは反則なんですよね」 俺は彼女の肩を掴みながら、体を優しく引き離す。すると弱々しい力が込められた指で服の裾を掴まれた。 「別に反則だなんて言ってない」 彼女は俺から視線をそらせると、そうはにかんだ。唇を尖らせて俺の裾を指先でグリグリと丸める。いやもう愛らしすぎるだろコレ。もう一度抱きしめても良いのかな? 「ありがとう、もう十分だ。おかげでNPは満タンだ。まあ、あれだな。こうやって休日に二人で過ごす時間というものもぬくもりを感じるものだな」 その今にも向日葵が咲きそうなくらいの明るい笑顔に、思わず頭がクラついてしまった。 まったく… 魔王のくせにこんなに可愛いのは反則だ。
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