君は僕の死体にそっと花をのせてくれた

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僕は物心ついた時から健康とは言えなかった。 毎日毎日薬を飲んで、副作用が出たら薬を減らし、それでもまた副作用が出て、別の薬に変えてその薬でもまた副作用が出る、その繰り返し。 『いつか合う薬が見つかるから』医師も家族も言ったけど『いつか』まで体が持たなかった。 『多臓器不全』が僕の死因。 僕は学校にもほとんど通えず、そのため僕を見送ってくれる人は少なかった。母と父と兄と祖母と僕には誰だかわからない人達と君。 君は兄と仲が良くてたまにうちに遊びに来ていた。 君は健康そのもので、兄と遊ぶ姿を僕は部屋の窓から眩しく見ていた。 言葉を交わした事は少ししかない。それでも僕は君が来るのが嬉しかった。 いつも楽しそうな君が今日は神妙な顔をしてるのがなんだかおかしい。 棺に眠る僕の体は化粧のせいか記憶にある僕よりずっと健康そうだ。 そして君は僕の死体にそっと花をのせてくれた。 それは白い花だった。 君はずっと元気で長生きしてね。 おわり
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