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「てめーこのやろー!」
バアアン!!
そのとき、無常にも屋内に銃声が鳴り響いた。弾は見事に和田直人の胸に命中。そのまま彼は倒れ込んでしまった。突然の展開に驚きつつも、私は急いで彼の元へ駆け寄った。彼は自分の血で真っ赤になった胸を押さえながら横たわっていた。
「うう……川崎刑事……」
辛うじて生きているらしい。彼は苦悶の表情を浮かべながら、私の方に顔を向けている。そして、虫の鳴くような声で囁いた。
「最期に……最期にひとこと言わせてくれ……」
彼はたしかにそう言った。だが、私は知っている。最期のひとことは"ひとこと"ではないことを。
すると、彼はいきなり遠い目をした。
「あれは川沿いの桜が咲き乱れ……目の覚めるような青空が広がる入学式のことだった……」
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