招かれざる客

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「義姉さん、大事ないかい?」 「ええ、なんとか」 「怖かったろう?」 「善三さんが来てくださって心強かったですわ」 そう言ったワタクシは、善三さんの視線がワタクシの下半身に向いていることに、気づきます。 ふと自分の下半身を見ると、寝間着が乱れ、白い足が露わになっているではありませんか。 「きゃっ」 ワタクシは慌てて裾を正します。 善三さんも視線を逸らし、見て見ないふりをして下さいます。 「ところで…」 ワタクシが落ち着いた頃を見計らって、善三さんが居住まいを正してこちらに向き直りました。その滾るような熱い視線に、ワタクシも“どきり”としてしまいます。 あゝ善三さんに怒られるのかしら。 こんな不始末、許されるものではないですものね。 「義姉さん、あれ程言っただろう。戸締りをちゃんとするようにって」 激しい言葉でワタクシをなじります。 ワタクシは、密かにお慕いしていた義弟の善三さんに叱られた悲しさから、ふらふらと立ち上がりました。 そして。 戸棚の奥に隠してあった割れた秘蔵の蜜壺を、黙って片付けることにしました。 こっそり闇市で仕入れた極上の蜂蜜です。 それを台無しにされがっかりしているワタクシに、善三さんはさらに酷いことを告げるのです。 「熊に忍び込まれて食料を盗られた間抜けは、義姉さんで三人目だ」 ワタクシが涙ぐみながらその熊が座っていた床に手を当てますと、まだほんのりとぬくもりを感じました。 壺のカケラを拾い上げ手に取ったワタクシは、善三さんの不興を買った原因となった、その可愛らしくも憎らしい、赤いチョッキを着た黄色い熊の去った方を、恨めしそうにいつまでもいつまでも見つめるしかありませんでした。 おはり
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