ゆるり、香る。

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死臭はどこか甘く香る。 「眠るような顔だな」 皆が悲しみにくれる。 俺のなかには「悲しみ」なんてない。 悲しみよりも 目の前の「亡骸」の匂いが気になっている。 「往生したわね」 皆が花を棺にいれる。 花の香りと死臭が相まって 儚い香りが芯を持つ。 「……甘い」 いい匂いだ。 俺の中の何かが砂のように消えた気がした。
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