雪空の間、大地の林檎

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雪空の間、大地の林檎

 大きな窓越しに見えるビル街は、数分前からその上層階を雪で覆い隠されている。真冬の空を夜色で埋めつくし、それをさらに雪色でもう一度染め直したような曖昧な色。10階建ても24階建ても区別ができないくらいに上空では活発に寒波の訪れを叫んでいるようだ。天使とかいう表現など生ぬるい。あれは、冬の使い魔だ。  数メートル離れたところにある自動ドアからは引っ切り無しに寒そうに身を縮めた人々が、我先にと屋内へ滑り込んでくる。仕切りとなるガラスウォールは存在しているが、そんなことは御構い無しとばかりに、暖風とその都度入れ替わってくる寒気は足元、足先から熱を奪っていくのがよくわかる。もう少し集め厚めの靴下を履いてくればよかった、と少しばかり後悔した。  横を見れば銀色ボディのラップトップパソコンを開く者が数名。こんな時間なのに。さすがに休めばいいのに、と思う。格好だけなら、帰った方が尚更良いと思う。付かない格好を付け体調を崩すなんてことがあったら、そんな笑えないコントはない。
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