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光のプリズム
昼食は逆にコーヒーのみ。
学食のカフェオレは機械の都合で加糖されており飲めたもんじゃない。慣れた手つきでブレンドのボタンを押し食券を取り出す。11時過ぎの学生食堂はまばらで、晴天だというのに天井の高い空間のおかげか、羽織ものがあっても尚薄ら寒く感じるほど静かだった。
「はいよ」オバチャンに味噌汁のように渡された白い器にコーヒーがタプタプ揺れる。マシーンの隣でラーメンスープがグツグツ煮えているのが見え、思わず油膜が浮いていないか目を凝らした。
その液体が静かに置かれた時、だだっ広いテーブルの白に反射して映る銀杏の黄と器の中の褐色が見事なコントラスト。ここはこの時期、見惚れんばかりの特等席だ。
菅野真人はそんな情景を前にしながら、今一つ冷めている自分に驚いていた。
確かワンダホー、とかそんなレベルで昨年は感動したはずだったのだが今年はどうしたものか。二回目だからだろうか、それとも昨今の憂鬱な出来事のせいなのか、今一つどころか全く来ない呆れるくらい。再びカモンと自問自答。黄色い物体を見ながら、真人はただ眩しさに目を細めた。
「今日は来るんやろ」
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