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「ちゃうねん。そこがわかってへんねん。女引きずってる時は、女で補うしかないんやって。新しい出会いがこの大学にあると思うか」
理工学部とはいえ、周囲には女子もいるというのに何とも失礼な発言を大声でする。平然とした様子の護に真人はつい鼻で笑ってしまう。
「由美ちゃんのことは残念やったし、おかげでバイトを追われることになったのもしゃあないことやん。破れたもんが去るんは武士道や」
変なところに気を遣って小声で言う。護の欠点は早合点しすぎるところだ、と真人は聞きながら思っていたが、特に突っ込まずにそのまま耳を傾けていた。
これ以上コーヒーがぬるくなるのが許せない。
ブラックをあらかじめスプーンで掻き混ぜてから、コーヒーフレッシュを投入すると、漆黒に絵具のような真っ白が綺麗な曲線を描いてあっという間に溶け合っていく。
「そういうとこやで」
護の声に真人は意味もわからずスルーしていたが、
「そういうところに美を求めるところが、女にもてへん理由やで」
定食に箸をつけた護は、真人のその、既に混ざり合った液体を見ながらしみじみと言う。
「どうせこの席選んだんも、この銀杏に見入ったからやろ。お前が女やったら俺惚れてまうで」
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