光のプリズム

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黙り込みながら、今から話す話は、間違いなくまた「エロい」と言う展開になるなと躊躇する。正直、今真人はそういう猥談で盛り上がる男子高校生のような気分ではない。真人はこれ以後に続く会話を不毛に感じ、窓の外の銀杏を見やりながらチビチビと人工的な味のする水っぽいミルクコーヒーを口に運んだ。 「新婚の邪魔すんのが嫌なんや?」 真人は視線を護に戻すと、ああほんとこいつはコミュ力が高いなと感心した。 相手の様子で先を読む力、これが俗に言う「空気読み」ってやつでこれを「さらり」とやり遂げる護の才能があれば、真人も熱烈に言い寄ってきた由美にあっさり3ヶ月で別の男に乗り換えられてしまうこともなかっただろう。 尚且つ護の尊敬すべき点は、その後に相手の感情を逆なでせずに自分の思いを伝えられるところだ。大阪弁ってなんて便利なんだろうと羨ましく思ったこともある。真人は無言のままコクコクコクと数度、相槌(あいづち)を打った。 「やろなぁ」 護の視線が定食に戻ると、また忙しく箸が動き出した。黒塗りの箸だけを見つめているとそのぎこちない指揮に、真人の心はある意味で淘汰(とうた)されていく。 八割方こちらが邪魔をしてるんだと真人は自覚していた。しかしその反面、邪魔するも何も、もはやこっちが邪魔してるのかあっちが邪魔してるのかわからずにいたのが本音だった。     
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