3

5/6
前へ
/16ページ
次へ
    「明日、用事は」 「……別に予定は入れてねえけど」  何次会まであるかわかんなかったし、と呟くカズイのうなじに齧りつくと、肉のない骨ばった背中がびくりと震えた。 「ふうん」 「なんで」 「色々あんだろ。泊まってくなら、俺が出かけるときの鍵のこととか」 「──ああ」  嗄れた声で低く答えるカズイの顔は見えない。  何を考えているのか、終わった後も身体を預けもせず、かと言って離れて行こうともせず、痩せた背中は井川の腕の中にあった。  本当に男との経験がないとしたら、余程あの男に惚れていたのか。名前を呼ぶ度蕩けたカズイはひどく乱れ、井川を入れたまま何度もいった。今まで抱いたどんな女より扇情的で、今まで抱いたどんな女より井川を見ていなかった。  今は何も語らない背中が快感に震える様子を思い出す。どんなふうに背を撓らせ、どんな顔で身悶え喘ぐかは知ったけれど、それは知りたいことのほんの端っこなのだと今更思った。

最初のコメントを投稿しよう!

368人が本棚に入れています
本棚に追加