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「明日、用事は」
「……別に予定は入れてねえけど」
何次会まであるかわかんなかったし、と呟くカズイのうなじに齧りつくと、肉のない骨ばった背中がびくりと震えた。
「ふうん」
「なんで」
「色々あんだろ。泊まってくなら、俺が出かけるときの鍵のこととか」
「──ああ」
嗄れた声で低く答えるカズイの顔は見えない。
何を考えているのか、終わった後も身体を預けもせず、かと言って離れて行こうともせず、痩せた背中は井川の腕の中にあった。
本当に男との経験がないとしたら、余程あの男に惚れていたのか。名前を呼ぶ度蕩けたカズイはひどく乱れ、井川を入れたまま何度もいった。今まで抱いたどんな女より扇情的で、今まで抱いたどんな女より井川を見ていなかった。
今は何も語らない背中が快感に震える様子を思い出す。どんなふうに背を撓らせ、どんな顔で身悶え喘ぐかは知ったけれど、それは知りたいことのほんの端っこなのだと今更思った。
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