人気の席

　結構有名なレストランのフロアで働いてるんだけど、いくつもある席の中でもやたらと客が座りたがる席がある。
　壁際の四人掛け。そこからじゃそれなり良い景色の窓の外は見えないし、横を人がかなり通るから、密談に向いている場所でもない。
　そんな場所なのに、忙しくてまだそこには食べ終えた食器が置かれている、且つ、他に空席があっても、そこに座りたいから早く片づけてほしいという人が続出する。
　どうしてあの席はあんなに人気なのだろう。
　不思議に思いながらも、原因ら調べるとかは思いもしなかった。
　そんな私が、休日に勤め先のレストランに赴いた。
　今日は一人のお客様。横柄な態度なんて取らないけれど、いつも通りに接客してね。
　なるべく空いてそうな時間を選んだので、ざっと見ただけでも空席は恩かあった。どもどうしてか、私はまだ前の人の残っているあの席に座ってしまった。
　ここに座っただけでフロアの人間を急かす意味になる。それが判っているのに、他の空席に移動する気にまったくならない。
　注文を聞きに来た同僚が恨めしそうな目で私を見ている。
　でもどうしてか、この席に座っていると人の苦労なんてどうでもいいという気持ちになって、私は、一人では食べ切れないような量の品を注文した。
　私、何してるんだろう。今の注文の品なんて、絶対食べきれる筈がないのに。
　基本的に店員同士だから、こっそりお持ち帰りとして包んでもらおうか。
　そんなことを考えているうちに、私の目の前に注文品が並べられた。