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どう見ても品数が多すぎる。確実に残すことになりそうだ。
見ただけでそう思った。それなのに、どういう訳が運ばれた料理は凄い勢いで減っていく。
私はちょっと手をつけただけ。でも気づいたら、大量の皿は総て空になっていた。
フロアにいる同僚が私のテーブルを見てニヤニヤしている。きっと私はすさまじい大食いだと思われているのだろう。
でもそれは違う。私はほとんど食事をしていない。運ばれた品の中身を平らげていたのは…薄ぼんやりと私の向かいの席に輪郭を表した何ものかだ。
何となくそこに何かがいる。近くで見ていればそう感知できる程度の何か。
でもそれは、テーブルに運ばれて来た食品を遠慮もなく食い荒らした。
もしかしたら、この席にみんなが座りたがるのは、アイツがそう願っているせいなのかもしれない。
自分のいるテーブルに食料を。その願いが客達をここに座らせているのかもしれない。
その理由が何かは知らないけれど、関わらされる側としては迷惑な話よね。でも、解消の方法は判らないから、放置するしかなさそうだけど。
翌日立ったレストランのフロア…今日もあの席は大人気だ。
給仕側にたった今の私には見えないけれど、今日もこの席にはあの何かがいて、席に座った人に過大な注文をさせているのかな。
店的には売り開けがよくなるから喜ばしいかもしれないけど、ただの客としてそこの席に座った身としては、どうしても一言言わせてもらいたい。
ごはんはタダじゃないんだから、勝手に頼んで食べるんじゃなーーーい!
人気の席…完
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